小倉先生とジェシー

先日、初めて小倉昇先生にお会いした。先生は居合道範士八段、剣道教士七段。全日本剣道連盟参与でいらっしゃる。

場所はフランスのベルサイユ。3日間にわたって開かれた研修セミナーに、欧州のサムライたちが200人ほど集まった。

大規模な居合の稽古を見学するのも、大人数の袴姿の外国人を見るのも、私には初めての体験。真剣な練習風景は、ことに圧巻だった。

小倉先生は大勢の大人たちを前に、噛んで含めるようにやさしく教えてらした。すごい経歴の人だからと構えていたら、思いのほか洒脱な先生だった。足さばきの練習で「みなさんのは送り足じゃなくって、引きずり足だよー」なんてコメントがとぶので、不謹慎にも私はケタケタ笑ってしまった。指導がおもしろいと、一日の疲労(徒労)感も残らない。

セミナーは朝から晩まで、小休憩を除いて丸一日続く。部外者には計り知れない、練修量。来る日も来る日も、倦まず弛まず居合を続けるなんて、「すごいなあ」と感じ入ってしまった。自分を発奮させながら、熾火のような情熱を燃やし続けるのは、何の趣味(仕事)にしても容易いことではない。

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思春期と暴力

昨年12月のバルセロナ。サグラダ・ファミリア (聖家族教会)付近の地下鉄ホームで電車を待っていると、嬉しそうに買ったばかりの本を袋から出して眺めている大柄のスペイン人青年がやって来た。本はイナゾー・ニトベのBUSHIDOと武術の写真集。本に触れたりページを開く眼差しに何かほのぼのとした愛情や善良さを感じる。微笑ましく眺めていると、その彼が近づいて来て「日本人の方ですか。僕は武術の稽古をしているんですよ」と話しかけてくれた。おでこと腹を押さえて「日本の文化や気の集中法はすばらしい」と言っているのが分かる。二駅ほどの間、片言のスペイン語で話して握手をして別れた。小さな出会いの締めくくりに握手をしようと手を差し出してくれる。南部人の暖かさを感じた。

彼のように、ヨーロッパに来てから武術大好き人に何人も会った。「そうだ日本は武術の国だったんだ」合気道に居合道、柔道、柔術、空手、剣道、弓術、なぎなた。日本の良さを、いつも海外で再発見する。

武道の好きな欧州人たちは、みんなおもしろい。どこかで「つながっている」という安心感も感じる。彼らの時間は武術が渡欧した時代のままで止まっているようで、彼らを通して当時の日本人の奥ゆかしさや品位、モラルを学ぶ。友人のベルギー人の小父さん(黒帯)なんかは、自分を宮本武蔵か誰かと勘違いしている時がある。日本にさむらいがいなくなっても、武士道は世界で活き続けてる。

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