人権としての水へのアクセス。水をめぐる争奪ドキュメンタリー

最近、すぐれたドキュメンタリー映画を立て続けに見ました。その一つが“Bottled Life”です。配給会社が後でいい日本語タイトルをつけるでしょうが。無理やり日本語にすると、「ペットボトルに入れられた命、生活、暮らし」とでもいいましょうか。

ペリエ、サンペレグリノ、ヴィッテルなど、70品目以上のミネラルウォーターを幅広く手がける世界最大の食品メーカ・ネスレ(Nestlé)をめぐるドキュメンタリーです。スイス人ジャーナリストRes Gehrigerが、本社、アメリカ・メイン州、パキスタン、ナイジェリアなどを取材し、ボトルウォーター・ビジネスの戦略・実態にメスを入れてます。自国スイスに本部をおく巨大多国籍企業のひずみを、スイス人が告発し複数の映画賞を受賞した労作です。

メイン州では、当企業による商用用途としての水資源の(無制限)利用確保とその拡大、地域住民との水をめぐる攻防、水源の荒廃、地元の女性活動家たちの活躍などを描写。

公営水道事業が未普及で安全な飲用水へのアクセスが制限されている発展途上国へは、安全性をうたう手法で進出した当社が地下水の採水・利用権利をにぎり莫大な利益を得る裏で、共有資源であった生活用水の管理・利用が地域住民の手から離れ、安心して飲める水が不足し、水が枯渇する危機的な状況を取材。

パキスタンではお金のある階層がネスレの商品で喉をうるおし、一方、貧しい人たち・こどもたちは水不足の犠牲になっている実態や、ナイジェリアでは貧窮家庭のなけなしの日銭の半分が水代に使われている現状を報告している。ちなみにネスレがパキスタンで売り出したピュアー・ライフは、ボトルウォーター世界一の売り上げを上げているとか。

〔クリーン(原発関係の人)、うつくしい(政治家でしたか)もそうですが〕ピュアとか持続可能を標榜する仕事をする人たちの戦略や、原発問題と同様、安全な水資源を確保・維持するにも、民主政が本当に大事であること等々、よくわかる映画です。

「もうひとつのノーベル賞」といわれるライト・ライブリフッド賞を受賞したカナダ人活動家で、「水は人権である」と訴えるモード・バーロウも、映画の中で解説してます。3.11後、ボトルウォーターが配給されたように、安全な水の確保は日本の社会問題にもなってきているのではないでしょうか。バーロウの著書は日本語訳されているようなので、ぜひ映画と合わせて読まれることをおすすめする。

www.youtube.com/watch?v=czfSwjx4yYA

www.nygreenfashion.com/html/learn/bottledwater.html

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